糖尿病治療では「食事療法」が治療の柱の一つです。ですが、「間食はダメ!」「甘いものは全部NG」といった誤解や先入観から、食事そのものがストレスになり、治療の継続が難しくなってしまう方も少なくありません。
とくに「間食」については、全く摂ってはいけないと思い込んでしまう方が多いのですが、実際には、適切に取り入れることで血糖値の安定や空腹感の調整に役立つこともあります。
そこで今回は、無理なく続けられる糖尿病治療のポイントとして、「間食」の選び方や注意点について詳しくご紹介します。
間食は完全に我慢しなくていい?――“食べない”だけが正解じゃない理由
糖尿病の方にとって、血糖値を安定させること(血糖コントロール)は治療の基本です。血糖の急激な上下を繰り返すと、合併症のリスクが高まり、体への負担も大きくなります。
その血糖コントロールの一環として大切なのが「食事療法」です。中でも、間食については「控えましょう」とよく言われます。これは基本的な考えではありますが、必ずしも“完全にやめるべき”というわけではありません。
間食と血糖コントロールの関係
長時間食事をとらない状態が続くと、次の食事の際に血糖値が急激に上昇しやすくなります。
例えば、朝食をとってから昼食まで5~6時間以上空くと、その間に空腹感が強くなります。こうした状態で次の食事をとると、血糖値が急上昇しやすくなります。
また、強い空腹感の反動で一度に多く食べすぎてしまうことも、血糖コントロールを難しくする原因になります。
このような血糖値の大きな変動は、糖尿病の管理において望ましいものではありません。そこで、食事の間隔が空いてしまうなどの場合には、少量の間食を適切なタイミングでとることが、血糖値の安定につながる場合があります。
こんなときには「間食」がプラスに働くことも
体の状態や治療内容によっては、間食が治療の一環として役立つこともあります。
- インスリン注射や一部の糖尿病薬を使用していて、低血糖のリスクがあるとき
- 食事の間隔が長く空いてしまい、強い空腹感が出る
- 高齢などで1回の食事量が少なく、こまめな補食が必要なとき
- 血糖値の急上昇を防ぐ目的で、医師の指導のもと食事を分けて摂る必要があるとき
こうした場合、間食は「我慢するもの」ではなく、体を整えるための補助的な栄養摂取と考えることができます。
治療を長く続けていくためにも、「食べない工夫」よりも「どううまく取り入れるか」が大切です。
どんなものを選べば安心?――間食の基本的な選び方
糖尿病治療中の間食は、どのように選べば安心なのでしょうか。
「少しだけだから」と気軽に食べたものが、意外と血糖値を急上昇させることもあります。そのため、食べるものを選ぶときには少し意識を向けることが必要です。
- 食物繊維が多いものを選ぶ
食物繊維には、糖の吸収をゆるやかにしてくれる働きがあります。特に「水溶性食物繊維」は血糖値の急な上昇を防ぐ効果が期待できます。
また、食物繊維は「腹持ちがいい」のも特徴で、食べすぎ防止にも役立ちます。 - 血糖値が急上昇しにくい食品を選ぶ
血糖値の“急上昇”と“急下降”を繰り返すと、体に負担がかかってしまいます。
そのため、間食には“血糖値をゆるやかに上げる食品(=低GI食品)”を選ぶことが大切です。 - 「量」を決めておく
どんなに体に良い食品でも、たくさん食べすぎてしまうとカロリーオーバーになり、逆効果です。間食は1日100kcal程度を目安に、量をあらかじめ決めておくことが大切です。
糖尿病治療中でも食べやすい間食の例
食品 | ポイント | 目安量(100kcal程度) |
---|---|---|
無塩ナッツ(アーモンド、くるみなど) | 食物繊維と良質な脂質が豊富で腹持ち◎ | 約10〜15粒 |
寒天ゼリー(無糖または低糖タイプ) | 食物繊維が豊富、低カロリー | 約10〜15粒 |
おからクッキー | 食物繊維が豊富、噛みごたえがあり腹持ちが良い | 2〜3枚程度 |
無糖ヨーグルト | 血糖値を上げにくく、乳酸菌・たんぱく質も摂れる | 約100g |
ゆで卵 | 血糖値に影響を与えにくく、満腹感が高い | 1個 |
他にも、ベビーチーズや蒸し大豆、全粒粉クラッカーなどもおすすめです。
選ぶときは「糖質が控えめ」「血糖値を急に上げにくい」「少量でも満足感がある」ことを目安にすると安心です。
タイミング次第で、血糖値はもっと安定する?――“食べる時間”を意識してみよう
間食を取り入れる際は、「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」も大切なポイントです。適切なタイミングで摂ることで、血糖値のコントロールに役立ち、空腹によるストレスや食べ過ぎの予防にもつながります。
理想的なのは、食事と食事の間で血糖値が下がりすぎないようにするタイミングです。たとえば、朝食と昼食の間、あるいは昼食と夕食の間(特に15時前後)など、空腹感が強くなる時間帯に少量の間食を摂ることで、血糖値の急激な上下を防ぐ効果が期待できます。
一方で、食後すぐの間食は要注意です。食事によってすでに上がっている血糖値をさらに押し上げてしまう可能性があるため、基本的には避けるようにしましょう。どうしても間食をしたい場合は、食後1〜2時間ほど空けると安心です。
また、夜遅くの間食にも注意が必要です。就寝直前の飲食は消化が十分にされないまま眠りにつくことになり、睡眠の質を下げたり、翌朝の血糖値が高めに出たりすることがあります。夜間の空腹が気になる場合は、夕食の時間を調整したり、内容を工夫することで対応できることもあります。
逆効果にならないための注意点
糖尿病治療で間食を取り入れる際には、次のことに注意しましょう。
- 間食の習慣化に注意する
間食はあくまで「補助的なもの」です。長時間にわたりダラダラと食べ続けると、知らず知らずのうちに摂取カロリーが増え、血糖コントロールが難しくなることがあります。間食の時間を決め、量と質をしっかり管理することが大切です。例えば、午後3時頃など決まった時間に少量を摂る習慣づくりがおすすめです。 - 飲み物にも注意を払う
ジュースや甘いコーヒー、エナジードリンクなどの甘い飲み物には多くの糖分が含まれており、血糖値を急激に上げるリスクがあります。これらは「飲む間食」とも言われ、カロリー摂取が見えにくい点でも注意が必要です。間食の際は、水やお茶、無糖のコーヒーなど、糖分を含まない飲み物を選びましょう。
まとめ

このように、長時間の空腹や一度に食べ過ぎることで起こる血糖値の急激な変動を防ぐには、食べる内容やタイミングを工夫し、血糖値に配慮した間食を上手く取り入れることで、血糖コントロールに役立つだけでなく、気分転換にもなり、治療のストレスを和らげる助けにもなります。
ただし、糖尿病の進行状況や治療内容には個人差があるため、適切な間食の種類や量も変わってきます。不安なことやわからないことがあれば、自己判断せずに必ず医師や専門の栄養士にご相談ください。
当院では、生活リズムや嗜好に寄り添いながら、無理なく続けられる食生活をサポートする栄養指導を行っておりますので、ぜひご活用ください。