尿検査の異常は体からのメッセージ?― 尿蛋白・尿潜血について

健康診断や人間ドックで欠かせない検査の一つが「尿検査」です。

尿検査は、腎臓や尿路に関わる病気を早期に見つける手がかりとなり、とても大切な検査ですが、“具体的に何を調べているのか”“どういう意味があるのか”、よくわからないまま受けている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、尿検査の中でも特によくチェックされる「尿蛋白」と「尿潜血」について、結果に異常が出た場合に考えられることや、必要に応じて行われる対応や診療の流れについて、わかりやすく解説していきます。

普段なかなか意識することの少ない尿ですが、実は体からの大切なサインが隠されています。
日々の健康を守るために、そのメッセージを読み解くヒントとして、ぜひ最後までご覧ください。

 

尿の役割

尿は、腎臓で血液をろ過することによってつくられます。
体にとって不要な老廃物や余分な水分を体外へ排出する重要な役割を担っており、体のバランスを保つために欠かせません。
さらに腎臓は、体内の塩分や水分の調整、血圧のコントロール、ホルモンの分泌など、全身の健康にも深く関わっています。そのため、尿の状態を調べることは、腎臓をはじめ尿路(膀胱・尿管・尿道)や全身の健康状態を知る大切な手がかりとなります。

たとえば尿に「蛋白が多く含まれる」「血液が混じる」といった変化が見られることがあり、これらは「尿蛋白」「尿潜血」と呼ばれます。いずれも体の異常を知らせる重要なサインであり、尿検査はこうした異常の早期発見に有効です。

 

尿蛋白とは?体の中で起きていることを知ろう

尿蛋白(にょうたんぱく)とは、文字通り「尿の中にたんぱく質が混じっている状態」を指します。
通常、腎臓には「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれるフィルターの役割を持つ組織があり、血液をろ過して老廃物を尿に排出しています。
このフィルターは非常に精巧で、本来であれば体に必要なたんぱく質や赤血球は尿に漏れ出さない仕組みになっています。

しかし腎臓に異常があると、糸球体の機能が低下してフィルターが壊れ、尿の中にたんぱく質が漏れ出すようになります。
この状態が「尿蛋白陽性」です。

 

尿蛋白が出る原因

尿蛋白の原因は大きく分けて、 一時的なものと病気によるものがあります。

一時的な尿蛋白

・激しい運動をしたあと
・発熱しているとき
・強いストレスがかかったとき
・脱水状態のとき
このような場合は一時的な変化で、安静や体調の回復により改善することが多く、必ずしも病気とはかぎりません。

病的な尿蛋白

 一方で、次のような病気が背景にあることも少なくありません。

《急性の病》
・急性糸球体腎炎
・急性腎盂腎炎(細菌感染による炎症)
・一部の急性感染症や薬剤による腎障害
突然発症し、血尿、発熱、むくみなどを伴うことがあります。

《慢性の病気》
・慢性糸球体腎炎
・ネフローゼ症候群
・糖尿病性腎症
・高血圧性腎症
・その他の慢性腎臓病(CKD)
このような病気が原因で尿蛋白が続いている場合、腎臓の機能が徐々に低下していく危険があり、放置すると将来的に透析が必要になることもあります。

 

 尿潜血とは?―知らないと誤解しやすい血尿との違い

尿潜血(にょうせんけつ)とは、尿の中に血液の成分(赤血球)が混じっている状態を指します。
肉眼で尿が赤く見える「血尿」とは異なり、尿潜血は肉眼では尿の色に変化がなく、顕微鏡や検査試薬を用いた尿検査で検出されます。

「尿に血液が混じる」と聞くと不安に思われる方も多いですが、必ずしも重い病気を意味するわけではありません。

 

尿潜血が出る原因

尿潜血は一時的な変化によって起こることもあれば、腎臓や尿路の病気に関連して現れることもあります。主な原因には次のようなものがあります。

良性・一時的なもの

・激しい運動後
・月経の影響(女性の場合)
・発熱時の一過性変化
このような場合は一時的で、再検査で改善することも多くあります。

炎症や結石によるもの

・膀胱炎
・尿路結石
・腎盂腎炎
排尿時の痛みや発熱、腰背部の痛みを伴うことがあります。適切な治療で改善することが多いですが、繰り返す場合は詳しい検査が必要です。

腫瘍性疾患によるもの

・腎臓がん
・膀胱がん
・前立腺がん
自覚症状がなくても、尿潜血が続くことで発見される場合があります。特に中高年以降は注意が必要です。

 

尿検査で異常を指摘されたら

健康診断や人間ドックで尿検査に異常が見つかった場合、自覚症状がなくても体からのサインであることがあります。一時的な変化で心配がない場合もありますが、持続したり繰り返したりする場合は、早めに医師に相談しましょう。

尿蛋白が陽性の場合

腎臓の働きに異常が始まっている可能性があります。まずは内科を受診し、尿検査や血液検査で腎機能を評価してもらいましょう。必要に応じて腎臓専門医への紹介や、生活習慣の改善、薬物治療が行われることもあります。
また、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームのある方、腎臓病や透析治療を受けている家族がいる方は、腎臓に負担がかかりやすく、尿蛋白が持続・悪化しやすいため特に注意が必要です。放置すると慢性腎臓病(CKD)や腎不全に進むリスクがありますので、早めの受診や生活習慣の見直しが重要です。

尿潜血が陽性の場合

腎臓や尿路に病気が隠れている可能性があります。まず内科で基本的な評価を受け、必要に応じて泌尿器科で精密検査を行います。泌尿器科では、膀胱や腎臓を詳しく調べ、結石・炎症・腫瘍の有無を確認するために、尿検査や血液検査、超音波(エコー)検査、CT検査、膀胱鏡検査などが行われることがあります。

受診前の注意点

  • 採尿の方法とタイミング:一時的な影響で陽性になったかどうかを確認するため、朝一番の尿は避けます(※)。尿を採る際は清潔な方法で、中間尿(尿の最初と最後を少し残して、途中の尿を採る)を使用しましょう。
    ※…朝一番の尿は濃縮されており異常を検出しやすいため、一般的に健診などの尿検査では朝一番の尿を採りますが、再検査では一時的か持続的な異常かを判断するため、朝一番以外の尿を採取することが望ましい。
  • 生活習慣と体調:過剰な水分摂取やアルコール、極端な食事制限は控え、発熱・激しい運動・月経など体調に影響がある場合は、落ち着いてから受けましょう。

また、受診の際には現在服用している薬やサプリメントの情報を医師や検査機関に伝えることも忘れないようにしましょう。

 

まとめ

尿蛋白や尿潜血は、腎臓や尿路、全身の健康状態を反映する大切なサインです。
なかでも腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、病気があっても初期には自覚症状がほとんど出ません。そのため、尿検査は腎臓の状態を知るうえでも重要な検査であり、体からの大切なメッセージとも言えます。
一時的な変化で終わる場合もありますが、持続したり繰り返したりする異常は、放置すると腎臓や全身に影響を及ぼすリスクがあるため、尿検査で異常が指摘されたときは軽視せず、早めに受診して精密検査や生活習慣の見直しを行うことが、将来の健康を守るうえで非常に重要です。

当院では、皆さまに安心して医療サービスを受けていただける環境づくりを心がけております。どうぞお気軽にご相談ください。

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