話題の注射薬『ウゴービ』と生活習慣改善で考える新しい肥満症治療

近年、日本における肥満症患者数の増加は深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、成人の肥満(BMI 25以上)の割合は年々増加傾向にあり、特に中高年層で顕著です。

肥満症は、見た目の問題だけでなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・脂肪肝など、さまざまな生活習慣病や合併症のリスクを高める病気です。こうした背景から、肥満症の治療はますます重要になっています。

その治療の新たな選択肢として注目されているのが、最近ニュースやSNSでも話題になっている肥満症治療薬『ウゴービ』です。
「ダイエット薬」と紹介されることもありますが、実際には医学的に“肥満症”と診断された方を対象とする治療薬であり、医師の管理のもとで使用されます。

そこで今回は、ウゴービの特徴や効果、そして治療を行ううえで欠かせない生活習慣改善について、わかりやすく解説します。
健康な生活を続けていくために、治療と生活習慣の両立を一緒に考えていきましょう。

 

 肥満症とは?

健康診断や日常会話でよく耳にする「肥満」という言葉ですが、医学的には「肥満」と「肥満症」は明確に区別されています。

肥満は「太っている状態」を指す言葉で、病気を意味するものではありません。日本では体格指数(BMI=体重[kg] ÷ 身長[m]²)が25以上を「肥満」と定義しています。

一方で肥満症は、肥満に伴って合併症がある、または合併症を発症しやすい内臓脂肪の蓄積があるため、医療的に治療が必要な状態を指します。
日本肥満症学会では、BMI25以上、かつ、以下のいずれかを満たす場合を肥満症としています。

  • 肥満に起因する11種類の健康障害(合併症)のいずれかを有する
  • 健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある

さらに、BMIが35以上の場合は「高度肥満症」と診断されます。

つまり、「肥満」は体格の状態、「肥満症」は医療的に治療が必要な病気です。体重が多くても健康上の問題がなければ「肥満」にとどまりますが、生活習慣病や合併症のリスクを伴う場合には「肥満症」として積極的な治療が求められます。

資料参考:肥満と肥満症について(一般社団法人日本肥満学会)

 

注目の新薬『ウゴービ』とは

では、肥満症と診断された場合、どのような治療法があるのでしょうか。
治療にはいくつかの方法がありますが、近年特に注目されているのが肥満症治療薬 『ウゴービ』 です。

ウゴービの仕組み

ウゴービは「セマグルチド」という成分を有効成分とした注射薬で、GLP-1受容体作動薬に分類されます。
GLP-1は、食事をとったときに腸から分泌される「満腹ホルモン」の一種で、食欲の抑制や血糖値の調整に関わっています。

ウゴービはこのGLP-1と似た働きをすることで、自然に食欲を抑え、食べ過ぎを防ぎ、満腹感を持続させることができます。
その結果、過食を防ぎ体重管理をサポートできるため、肥満症治療薬として有効と考えられています。

投与方法と特徴

ウゴービは週に1回、皮下注射で使用する薬です。
自宅で自己注射できるように設計されており、毎日ではなく週1回の投与で済む点が大きな特徴です。
続けやすさという面でも、これまでの肥満症治療薬とは異なる選択肢となっています。
※保険診療で対応できる医療機関は限られており、当院で行う場合は自費診療となります。

効果について

海外および国内の臨床試験では、生活習慣改善とあわせて使用することで体重が平均10%以上減少する効果が報告されています。また、肥満に関連する糖尿病や脂肪肝、心血管系疾患のリスク低下にもつながる可能性があると注目されています。

さらに、ウゴービによる効果は体重の減少だけにとどまりません。臨床試験においては以下のような健康改善効果も報告されています。

  • 血圧の低下
  • 空腹時血糖およびHbA1cの改善
  • LDLコレステロールの減少
  • 肝機能マーカーの改善
  • QOL(生活の質)の向上

このように、肥満が引き起こす全身への負荷を軽減する「予防医療」としての役割が大きい薬です。
ただし、薬の効果には個人差があり、必ずしもすべての人が大幅な体重減少を実感できるわけではない点も理解しておく必要があります。

副作用や注意点

肥満症の薬物治療は、食事療法や運動療法を行っても十分な効果が得られない場合に、医師の判断で検討されます。
単に「やせたい」という理由だけで使用できるわけではありません。

主な副作用としては、吐き気・便秘・下痢・腹部不快感などの消化器症状が報告されています。
また、膵炎や胆石症など重い副作用がまれに起こることもあるため、使用中は慎重な経過観察が必要です。

そのため、必ず医師の管理下で使用すべき薬です。使用を希望する場合は、医師による診断と適応の確認を受けたうえで、安全に治療を進めることが大切です。

 

薬だけに頼らない、生活習慣改善の大切さ

 

ウゴービは肥満症治療の大きな一歩ですが、体重管理には薬だけでなく、食事・運動・睡眠といった生活習慣の改善も欠かせません。
薬で食欲をコントロールしながら、日常生活の中で少しずつ習慣を見直すことで、より健康的に体重を管理し、肥満症に伴う生活習慣病のリスクを減らすことができます。

食事

  • 野菜やタンパク質を先に摂る「ベジファースト」を意識する
  • 甘いものや脂っこいものは控えめに、間食は必要な場合のみ食べる
  • 時間や量を整え、規則正しい食習慣を心がける

運動

  • 無理のない範囲で、継続できる運動を取り入れる
  • ウォーキングや自転車、階段の利用など、日常生活でできる活動から始める
  • 筋肉量を維持することで基礎代謝の低下を防ぐ

睡眠

  • 良質な睡眠を確保することで、食欲を調整するホルモンバランスを整える
  • 就寝・起床のリズムを整え、十分な睡眠時間を確保する

ウゴービは、こうした生活習慣改善をサポートする補助的な役割として活用するのが理想です。

 

まとめ

肥満症は放置すると生活習慣病や合併症のリスクが高まる治療が必要な病気です。
最近話題の肥満症治療薬『ウゴービ』は、週1回の注射で治療をサポートし、食事・運動・睡眠などの生活習慣改善と組み合わせることで、より健康的な体重管理が可能になります。

当院では、医師による丁寧な診察や説明、必要に応じた血液検査・健康チェック、さらに食事・運動・生活習慣改善のアドバイスを通じて、患者さん一人ひとりに合わせたサポートを行っています。
「最近体重が気になる」「生活習慣病を予防したい」と感じている方も、まずはお気軽にご相談ください。

新しい肥満症治療を、無理なく一緒に進めていきましょう

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