お酒とたばこと食道がん

2020年、食道がんになる人は約2万人という予測データがあります。2万人の内訳は男性が圧倒的に多く、なんと女性の5倍。なぜそんなに男性に多いのでしょう?食道は私たちが口から入れた飲食物を胃へ運ぶ大事な道で、毎日酷使していると言っても過言ではなく、口にするものの影響は避けられません。飲酒と喫煙は食道がんの大きな要因となります。男性に多い理由としては、飲酒と喫煙をされる方が女性より多いということでしょうね。また、飲酒や喫煙だけなく、熱いものや辛い物などの刺激物の摂取も食道にダメージをもたらすとされています。
※がん統計予測 国立がん研究センター
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/short_pred.html

 

お酒を飲んで赤くなる人は食道がんになりやすい?

お酒を飲むと体内にアセトアルデヒドという発がん性物質ができます。この物質は毒性が高く、顔面や体を赤くしたり、頭痛や吐き気を引き起こしたりします。そのアセトアルデヒドを分解するのがALDH2という体内の酵素。つまり、ALDH2の働きが弱い=「お酒が弱い」ということになります。一般的にお酒が弱いとされるお酒を飲むと顔が赤くなる体質の人(=ALDH2欠損率が高い)は、アセトアルデヒドを分解できずに発がん性物質が体内に残ってしまい食道がんになるので要注意です。

もう一つ注意していただきたいのは「昔は赤くなったけど鍛えて赤くならなくなった」という人。実は別の酵素でもアセトアルデヒドを分解でき、その力は鍛えることができるのでお酒が飲めるようになり「お酒がつよくなった」と思ってしまうのですが、一定期間あけるとその力は元に戻ってしまうのでアセトアルデヒドが蓄積されやすくなり食道がんを発症しやすくなるというわけです。

ちなみに日本人は世界の中でもお酒が弱い人(ALDH2の働きが弱い人)が多いということが科学的にも証明されています。

 

たばこと4ミリの食道壁

たばこは身体にたくさんの害を与えるものと過去にもブログで書いてきましたが、皆さんもご存じですね。

やめたいけどやめられない、禁煙が難しいのはなぜ?

たばこの喫煙と肺がんになるリスク

 

食道の長さは25センチ、広がった時の直径は約2~3センチ。では4ミリって何だと思いますか?正解は食道の壁の厚さです。食道の壁はいくつもの層が重なってできているのですが、たったの4ミリなのです。食道がんは食道の粘膜が何らかの原因で幾度となく傷つけられ、正常だった細胞が、がん細胞へと変化していくのです。数千種類の化学物質が含まれていて、そのうち発がん性物質が50以上も含まれているたばこが、たった4ミリの壁の食道を通ることを想像すると、食道がんのリスクが高まることもイメージしてもらえるような気がします。また直接たばこを吸っていない場合の受動喫煙でも、たばこの発がん性物質を取り込んでしまうため周囲にも注意が必要です。その他の原因として熱いものや刺激物の摂取が挙げられますが、それらが食道の粘膜を傷つけてしまうことは理解できますね。日本人の食道がんのほとんどは、もっとも内側の粘膜上皮から発生する扁平上皮がんです。

 

食道がんの症状と進行

初期症状は熱いものや酸っぱいものがしみる感覚、飲み込むときに少し違和感を感じるなどです。がんが大きくなるにつれて、食道が狭くなることから、飲食物がつかえるようになり、柔らかいものしか通らなくなります。さらに進むと飲食物が通らなくなることで体重減少。進行して食道にとどまらず肺や背骨、大動脈に広がると胸や背中に痛みが出たり、気管や気管支に広がると咳が出たり、声帯におよぶと声のかすれにつながります。

0期・・・きわめて初期の状態。がんは粘膜上皮にあり。
Ⅰ期・・・がんは粘膜下層より浅い層にあり、リンパ節やほかの臓器に転移はない。
Ⅱ期・・・がんは固有筋層より深いものの、周囲臓器には浸潤しておらず、リンパ節転移や臓器転移もない。
Ⅲ期・・・がんは呼吸筋層を貫いているが、周囲臓器には浸潤なし。近くのリンパ節に転移、あるいは周囲臓器に浸潤あり。
Ⅳ期・・・ほかの臓器に転移あり。がんの深さやリンパ節転移の有無は問われない。

食道がんの予防には、百害あって一利なしのたばこは禁煙、休肝日を設けるなど控えめな飲酒、4ミリの壁に優しい食事を心がけましょう。

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