冬だけじゃないノロウイルス

冬場に「ノロウイルスによる集団感染」「ノロウィルスが検出され、営業停止」というニュースはよく聞く話だと思いますが、ノロウイルスは冬だけだと思っていませんか?

確かに、ノロウイルスは低温・低湿度の環境下では感染力が高く、生存期間も長いと言われており、気温20℃での生存期間は3~4週間であるのに対して、気温4℃では8週間生存できるという報告もあります。また冬の外気の乾燥により喉が乾いて傷みやすくなりウイルスが付着しやすくなりますし、咳やくしゃみなどの飛沫もすぐに乾燥して粒子となって空気中を漂うので感染を広げることになるというのも事実。牡蠣などの二枚貝が冬に旬を迎えることもノロウィルスによる食中毒が冬に増える原因として挙げられますね。

ただ、冬場に比べれば非常に少ないものの夏場でもノロウイルスによる感染性胃腸炎やノロウイルスに起因する食中毒は発生しており、一年を通して注意が必要なのです。

 

ノロウイルスの感染経路

ノロウイルスは10~100個程度のわずかなウイルスが口に入っただけで感染するといわれるほど、非常に感染力が高いため、保育園や幼稚園、小学校、高齢者の施設など集団生活を送っている施設では集団発生することがあります。ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒の感染経路は主に経口感染(糞口、食品)。感染者の嘔吐物や排泄物に含まれるウイルスは大量で、便1g中に数億個とも言われています。感染者の嘔吐物や排泄物に接触した手を介してウイルスが口に入ったり、吐しゃ物などからの飛沫や、吐しゃ物が空気中に舞い上がって浮遊したウイルスを吸い込んだりすることで、ヒトからヒトに伝わって感染します。また、ウイルスが付着した牡蠣などの二枚貝類の生食や加熱不十分で食べるなどして食中毒を引き起こすという、食べ物からの感染もありますが、ノロウイルス食中毒の8割は、調理をする人の手を介して食品にウイルスがついてしまうことで発生しています。

 

ノロウイルス感染症の症状

ノロウイルスの潜伏期間は短く12~48時間と考えられています。ノロウイルスは体内に入った後、小腸の上皮細胞で増殖し、胃の運動神経低下・麻痺をもたらし、急に腹痛や下痢、吐き気、嘔吐などを発症します。通常、血便はありませんが、下痢については数回~10回以上になる時もあります。頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感などを伴うこともあります。発熱症状がある場合でも約37~38℃の軽度で、通常は発症後1~2日程度で症状は治まり、後遺症もないのが一般的です。

感染者は症状が出ている間、他の人へウイルスを広める可能性が高いですが、症状が落ち着いてからも2週間~1カ月程度は便にウイルスが出続けることが多いとされています。その期間に手洗いが不十分なままで食品や物を触り、最終的に口の中にウイルスが入り、ヒトからヒトへ感染を広げてしまうというケースも少なくありません。

また、不顕性感染といって、ノロウイルスに感染していても嘔吐下痢などの症状がないこともあります。その場合は症状がないままに便中にノロウイルスを排出し、無自覚のまま感染源となってしまいます。

 

ノロウイルスの検査と診断

急性の嘔吐や下痢などの症状や経過を評価、周囲の感染状況等も含めノロウイルス感染の可能性を考慮します。また脱水や炎症の程度を評価するために血液検査を行うこともありますが、血液検査のみでノロウイルス感染性と診断することはできません。

一般的に多く用いられるのは「ノロウイルス抗原検査」です。糞便中のノロウイルスを検査キットで検出するもので、約15分で結果が出ます。但し、結果が早くでるメリットはあるものの、ノロウイルスに感染していても陽性とならない場合もあり、ノロウイルスの感染を100%否定できるものではなりません。

ノロウイルス抗原検査は、重症化しやすい下記の方について保険が適応されます。

  • 3歳未満の患者
  • 65歳以上の患者
  • 悪性腫瘍の診断が確定している患者
  • 臓器移植後の患者
  • 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、または免疫抑制効果のある薬剤を服用中の方

食中毒や集団感染の原因究明には、より確実なウイルス学的診断として、行政機関や研究機関等で電子顕微鏡法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する方法でウイルスの検出を行い診断します。

 

ノロウイルスの治療

ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はなく、対症療法として安静にし、水分と栄養の補給を行います。乳幼児や高齢者、免疫が低下している人は脱水症状を引き起こすこともあるので注意が必要です。脱水症状がひどい場合には、病院で輸液(点滴)を行う等の治療を行います。尚、下痢症状を止めるために下痢止めを服用すると、ウイルスが腸管内に溜まり回復を遅らせることがあるので発症当初より用いるべきではありません。また乳児や高齢者の場合は、嘔吐の際に嘔吐物を喉や気管支に詰まらせて窒息することもあるので留意しましょう。

 

ノロウイルスの予防

極めて高い感染力を持つノロウイルス。ノロウイルスにはワクチンは存在しないため、石けんを使用した流水による手洗いが予防の基本となります。

石けんにはウイルスの活動力を失わせる効果はありませんが、手の油分が失われることで手指のウイルスが剝がれやすくなります。手の汚れや油分を石けんで落とした後に流水で流すことで、手指に付着したウイルスを除去することができます。

ノロウイルスは、アルコール消毒剤や熱に対する抵抗力が高いことで知られる「ノンエンベロープウイルス」※¹であるため、一般的なアルコール消毒の効果がありませんが、最近は「ノンエンベロープウイルス」にも有効な酸性アルコール消毒剤が開発されています。

※¹「ノンエンベロープウイルス」について
ウイルスは、その構造からエンベロープ(脂質性の膜)がある「エンベロープウイルス」とエンベロープ(脂質性の膜)がない「ノンエンベロープウイルス」の大きく2つに分類されます。アルコールはエンベロープ(脂質性の膜)を壊すことができるため、エンベロープウイルスには有効ですが、そもそも膜のないノンエンベロープウイルスにはダメージを与えることができず一般的な消毒剤は効きにくいとされています。

 

ノロウイルスの感染対策
  • 石けんを使った手洗い
    帰宅時・食事や調理の前・トイレの後・感染者の便や嘔吐物の処理後。
    指輪や時計などを外し、指先、指の間、親指周り、手首はしっかり。二度洗いが効果的。
  • 食品はしっかり加熱
    中心温度85℃以上で90秒間以上の加熱。
    特に二枚貝は、貝の内臓にノロウイルスが取り込まれていることがあるため中心部まで加熱しましょう。
  • 消毒
    調理器具は十分に洗浄後、熱湯(85℃以上)で1分以上加熱するか、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を使ってノロウイルスを完全に失活させましょう。
    感染した人の吐しゃ物や糞便で汚染された場所や衣類の消毒は次亜塩素酸系消毒剤を使用し、二次感染や飛沫感染を予防しましょう。塩素消毒液を作るための次亜塩素酸ナトリウムの薄め方は、下記参考サイトをご参照ください。

 

参考サイト

・内閣府食品安全委員会「ノロウイルスの消毒方法」
https://www.fsc.go.jp/sonota/dokukesi-norovirus.html

・厚生労働省「ノロウィルスに関するQ&A」(人からの感染を防ぐ具体的方法Q19~Q22)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html?id=19#19

・厚生労働省「ノロウィルス食中毒予防対策リーフレット」
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000364608.pdf

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