オンライン診療③ オンライン診療が抱える問題点と対策

今回のテーマは「オンライン診療が抱える問題点と対策」です。

2018年4月にオンライン診療が解禁されてから、実際には医療機関にも患者さんにもあまり普及してきませんでした。そこには「オンライン診療における問題点」があり、普及の妨げの要因になっていると考えられます。
対面診察では、医師は実際に触診や聴診をしたり、時には臭いで何かを感じることもあります。診察室に入ってくる患者さんの立ち振る舞いから心身の情報を得る場合もあります。

しかしオンライン診療は医師と患者さんの間のやりとりがPCやスマホ経由であり、医師の五感を使った診察に制限が生まれるため、患者さんの状態の変化に気づにくい可能性があります。撮影環境に依存する情報、たとえば照明の当たり方などで顔色が実際とはかけ離れてしまったりして診断に影響を与えることがあり得ます。また通信環境の質が悪いために十分な情報のやり取りができないケースも考えられます。

また当然ながら採血やレントゲンなどの検査をすることができません。
頻繁に検査が必要な疾患の場合はオンライン診療に向きません。状態が安定しない病状の方の場合はオンライン診療が望ましくない場合があります。例えば血糖コントロールが不良な糖尿病の方や、症状が不安定な心臓疾患の方などのケースです。
つまりオンライン診療を過信しすぎると重大な病気を見落としてしまったり、発見が遅れたり、病状が悪化してしまうということがあり得ます。
これらは医師と患者の双方にとってオンライン診療に対する不安に繋がるものです。

ですから「オンライン診察で必ずしも診察は完結しない」「必要な時にはすぐに対面診察に切り替える」という姿勢を常に持つことが大切です。
医師と患者さんの両者ともがこの姿勢を持つことが担保されてこそ、オンライン診療が成立するといっても過言ではありません。

またオンライン診療はスマホやPCを使うことが前提です。アプリ上で「保険証の確認」や「決済」が行えて便利な反面、そもそもIT機器に馴染みのない方ですと使うことが難しいです。
オンライン診療に良い適応の慢性疾患を持つ患者さんにはご高齢の方が多いですので、せっかくオンライン診療は便利だと思っても、ハードルが高くて参加できない場合が多いです。
オンライン診療アプリの場合、クレジットカード決済が基本ですので、クレジットカードを持っていない人は利用できないということになってしまいます。
スマホ診察が難しい場合は「電話診察」というやり方もあります。しかし電話診察の場合は「保険証の確認」をFAXやメールで行ったり、「支払い」は銀行振り込みや後日の窓口支払いになるなど、オンライン診療アプリ上ですべて完結するのに比べると不便さがあります。

現状ではオンライン診療は対面診察よりも診療報酬が低く、導入する病院に経済的な負担がかかります。システム導入や維持運用のための費用および労力がかかります。
一方で患者さんは診察料は減る一方で、オンライン利用料が別途かかります。
病院の内と外を通信機器でつなぐため、個人情報の漏洩リスクがあります。オンライン診療アプリを利用する場合は、提供している業者がそのシステムのセキュリティ性の確保に努めていますが、自前で無料通話アプリなどを使用する場合は注意が必要です。

 

これまでに上げたオンライン診療の問題点をまとめます。

・PC/スマホの画面越しであるために患者の状態を把握しにくい
・通信状況や撮影環境で診察の質に影響がでる
・検査ができない
・病状が不安定な方には適さない
・ITリテラシーの低い患者さんが利用できない
・クレジットカードを持っていない人が利用しにくい
・病院の診療報酬が低下する、システム導入・維持の負担がある
・患者さんにオンライン利用料がかかる
・個人情報漏洩のリスクがある

これらの要素は実際にオンライン診療が解禁されて約2年の間になかなか普及が進まなかった要因となっていると考えられます。
次回のブログでは、コロナウイルス蔓延とコロナ後の世界におけるオンライン診療の未来を展望してみたいと思います。

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