急性虫垂炎に似ている?大腸憩室炎とは

2024年の幕開け早々に、能登半島地震災害、羽田航空機事故、心が痛みます。どうか被災地支援が進みますように、心よりお見舞い申し上げます。そして被災や事故によって、お亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。

 

 

 

今年は、柔軟な姿勢でコツコツと努力を重ねると実を結び大きな成長を遂げるとされている甲辰。引き続き皆様の健康を守るお手伝いをさせて頂く所存です。

 

 

 

今日は、昨年12月にチョコレートプラネットの松尾さんが聞いたことがない病気になり話題となった「大腸憩室炎」についてお話したいと思います。大腸憩室炎は、炎症が起こる場所によっては、盲腸と呼ばれる急性虫垂炎に症状が似ていることもあり、大腸内視鏡検査をしないと診断が難しいケースもあります。

 

 

 

◆大腸憩室炎の前に大腸憩室症について

 

大腸憩室炎とは大腸憩室に炎症が起きること。では、大腸憩室とはどんなものでしょう?大腸の粘膜の一部がポコッとへこんでくぼみができ、小部屋ができるイメージ。大きさは5mm~10mmですが、大きなものだと2㎝を超えるものもあります。大腸の外側から見ると、風船のように袋状に飛び出した状態です。ただ、大腸に憩室が出来ること自体は珍しいことではなく、基本的には無症状で「大腸憩室症」と言います。症状がないので、大腸内視鏡検査や腹部CT検査の際に、偶然発見されることがほとんどですが、40歳以下の人でもおよそ5人に1人、また加齢に従って増えるので、意外に多くの方が憩室を持っているということです。ちなみに憩室は大腸に限らず消化管の様々な部位に生じますが、特に大腸に多くみられます。

 

 

 

◆憩室はなぜ出来るの?

 

では、なぜ大腸に小さな部屋、憩室ができるのでしょう。先天性のものもありますが、後天性のものが多いとされています。大腸の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜(しょうまく)の5層構造になっています。大腸の壁を血管が貫くように走っているので、一部筋層が途切れている等の部分は、壁が薄くなっていて圧力に弱くなってしまうのです。例えばそこへ、欧米化の食生活による食物繊維摂取不足で便秘になると、腸管内圧が上昇して内側から押し出され、ポコッと腸の壁の一部が飛び出した形になり、それを憩室と呼びます。他にも、加齢に伴い大腸の壁が弱まることや、出産などの過度な圧力、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、喫煙も憩室の発生を促進させる要因となることがあります。

 

 

 

◆大腸憩室症の合併症が怖い

 

大腸に小部屋ができる大腸憩室症は、ほとんどの場合が無症状で治療の必要はありません。ただ、合併症を引き起こす可能性があり、2大合併症の大腸憩室炎大腸憩室出血は、近年増加傾向にあります。一般的に男女比が2~3:1と男性に多いとされていましたが、昨今1.5:1と男女比の差はほとんどなくなってきています。

 

 

 

●大腸憩室炎

 

憩室に糞便が溜まったままの状態が続いて、内部に細菌が繁殖し、憩室に炎症が起きること。冒頭のチョコプラ松尾さんが罹患した病気です。症状は発熱や腹痛、下痢など。当然、憩室は大腸のどこにでも起こるもので、近年は左側に憩室が出来る割合が増えているとはいえ、日本では右側に起こりやすいとされており、腹部右下にある憩室で炎症が起こった場合は、腹部右下が痛む急性虫垂炎も疑われます。

 

 

 

診断は、問診、触診、血液検査、腹部超音波検査、腹部CTなどを併用して行われます。炎症が強く腸の周囲に膿瘍といった膿が溜まっていたり、穿孔といって消化管壁に穴が開いてしまっていたりする場合は外科手術が必要になるため、注腸造影検査を行うこともあります。炎症が落ち着いてから、炎症の原因に大腸がんなどの病気が隠れていないかを調べるために大腸内視鏡検査を行うことが多いです。

 

 

 

治療としては、絶食による腸管安静、抗菌薬の投与、軽症の場合は通院治療も可能です。症状がひどい場合は入院して絶食しながらの治療となります。ただ、一旦治癒しても再発率は1年以内に約30%と高いので食生活を含めた生活習慣の改善が大切です。

 

 

 

重症の憩室炎で膿瘍の場合は膿を体外に排出させる膿瘍ドレナージや、必要に応じて膿瘍周囲の大腸切除手術を行います。穿孔や腹膜炎等を起こしている場合も緊急手術が必要で、腹膜炎の状況によって「人工肛門造設術」を行うこともあります。

 

 

 

腹痛を放置して重症化すると、腹部全体に炎症が広がって命の危険にさられることもあります。我慢せずに早めに受診しましょう。

 

 

 

●大腸憩室出血

 

憩室からの出血は、憩室の底にある血管が何らかの刺激によって損傷して起こるので、多くの場合、腹痛や下痢を伴わず、突然の下血で発症します。糖尿病や高血圧、虚血性心疾患の治療中の方、抗血栓薬や痛み止めの薬(NSAIDs)を服用中の方は憩室出血が起こりやすいので要注意です。

 

 

 

診断は問診や触診などを基に行いますが、処置が必要となれば、腹部造影CT検査や大腸内視鏡検査等が用いられます。内視鏡検査でも出血部位が確認できない場合は出血シンチグラフィーという検査が行われることもあります。

 

 

 

治療は、出血が軽度であれば入院して点滴と絶食による腸管安静。自然止血する場合も多いですが、出血を繰り返したり出血が多い場合は、止血クリップなどで出血点または憩室の開口部を塞ぐなどして止血する内視鏡的止血術か、カテーテルで金属のコイルなどを出血部位に送り、栓をして止血する動脈塞栓術を行います。また開腹して出血源の憩室がある大腸を切除する大腸切除術が用いられることもあります。

 

 

 

憩室の壁は薄くなっているものの血管は流入しているので、一度出血するとなかなか止まらないこともあり、大量出血すると死につながることもあります。下血、血便がみられたら早めに受診しましょう。

 

 

 

◆大腸憩室症の予防について

 

大腸憩室症になると大腸憩室炎や大腸憩室出血を引き起こす可能性があります。発症リスクの要因の一つとして、逃れられないのが加齢。歳をとることで大腸の壁が薄くなるため憩室ができやすくなるのです。普段から下記の点には気をつけましょう。また、喫煙により発症リスクも上がるため禁煙をお勧めします。

 

 

 

●食事と栄養

 

腸の健康を維持するために、肉など動物性のタンパク質や脂質は控えめにして、食物繊維の多い食習慣を目指し、野菜、果物、穀物、豆類などを多く取り入れてバランスの取れた食事を心がけましょう。アルコールやカフェイン、香辛料等の腸に刺激の強いものは摂り過ぎないように。適切な水分摂取も大切です。

 

 

 

●運動

 

運動は腸の動きを促進し、便通を改善するのに役立ちます。睡眠をしっかりとって、定期的に適度な運動をすることは消化器系の健康保持に寄与し、発症リスクである肥満の予防にも繋がります。

 

 

 

●便通の正常化

 

便秘や下痢を避け、正常な便通を維持することが重要です。規則的な排便習慣を確立しましょう。

 

 

 

●ストレス管理

 

長期間にわたるストレスは腸の機能に影響を与える可能性があります。ストレスを発散し自分なりのリラックス法を見つけて自立神経を整えましょう。

 

 

 

●遺伝的リスクの認識

 

遺伝的な要因が関与している場合、家族歴や遺伝子検査を通じてリスクを把握し、医師への相談をして検査を受けるなどしておきましょう。

 

 

 

●定期的な検査

 

定期的に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることで、早期発見、早期治療が可能です。治療が不要な場合も、病状の管理と将来の合併症の予防に役立ちます。

 

 

 

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