RSウイルス感染症 大人から子供までの詳しい症状

気にしてください、RSウイルス感染症

国内発「RSウイルス」ワクチンが発売され、接種が始まりました。とは言え、インフルエンザや新型コロナウイルスのように誰もが知っている病気ではなく「ん?RSウイルス?って何だ?」と聞いたことがない人もいるかもしれませんね。より多くの方々にRSウイルス感染症を知ってもらうために、今年1月24日からテレビCMが全国で放映されているので、少し認知が広がっているといったところでしょうか。平原綾香さんの優しくも芯のある声と、さだまさしさんが共演しています。このCMでお二人が疾患啓発をされている「せき、鼻水、発熱等の症状が出る子どもも大人もかかる病気、RSウイルスによる呼吸器感染症」についてお話します。

 

子どもも大人もかかるRSウイルス感染症

一般的には認知度は低いかもしれませんが、RSウイルスは世界中でみられる昔から存在していたウイルスで、2歳までにほぼ100%が一度は感染すると言われているので、子育てをされたママさんパパさんはご存じの方も多いはずのとても身近な病気なのです。RSウイルスは一度感染しても十分な免疫は得られず、何度でも感染と発症を繰り返します。乳幼児の初感染は重症化しやすいことから、RSウイルスは子どもの病気だと思っている方も多いかもしれませんが、子どもも大人もかかる病気です。特に、慢性の基礎疾患のある方や、免疫が低下している高齢者の方は、肺炎を引き起こすこともあるので注意が必要です。日本では冬~春に流行する傾向にありましたが、近年は秋にピークがみられたり、夏にピークがみられたりしているので、一年を通して感染する病気という認識になりつつあります。

 

RSウイルスの感染経路や症状

RSウイルスの感染経路は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同じ。ウイルスがせきやくしゃみ、会話の際に口からしぶきが空気中に飛び出して近くの人が吸い込む「飛沫感染」や、RSウイルスに感染している人との直接の接触や、ウイルスが付着したドアノブ、タオル等の物を介して間接的に接触したことによっておこる「接触感染」があります。

潜伏期間は通常RSウイルスに感染してから2~8日、典型的には4~6日間とされていて、症状は鼻水、咳などの上気道の症状や発熱など。

 

  • 大人・・・健康な成人が発症すると、多くの方は風邪のような症状が現れるものの数日でよくなりますが、喘鳴、呼吸困難などの下気道の症状が現れて、回復に1週間ほどかかる方もおられます。また、高齢者や喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・心疾患などの慢性の基礎疾患がある人、免疫機能が低下している人の場合、細気管支炎や肺炎を引き起こしやすく、重症化につながり入院や死亡に至るケースもあります。

 

  • 子ども・・・乳幼児は多くが軽症ですみますが、初感染乳幼児の場合は約20〜30%ほど気管支炎や肺炎などの下気道症状が現れることがあります。基礎疾患を有する小児(特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患がある小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児等)や、生後6か月以内の乳児は、細気管支炎や肺炎に加え、呼吸発作、急性脳症などが起こることがあるため、注意が必要です。

 

RSウイルス感染症の治療

RSウイルス感染症に対する治療薬は、現在のところ特定の乳児において発症を抑えるお薬があるものの、RSウイルス感染症に対する特定の治療法はありません。そのため基本的には症状を和らげるための対症療法として、酸素投与、点滴、呼吸管理など症状を和らげる治療を行います。

※投与対象患者を早産児や基礎疾患を持つ乳幼児に限定して、重篤な下気道炎の発症を抑制するために遺伝子組換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab)の投与があります。

 

成人向けRSウイルス感染症ワクチン発売

これまでRSウイルスに対するワクチン開発は30年以上続けられていましたが、冒頭のように、ようやくRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」の製造販売承認が認められ、2024年1月に発売となりました。60歳以上のすべての高齢者を対象とした国内初のRSウイルスによる感染症を予防する成人向けワクチンです。RSウイルスには有効な治療薬がないため、予防がとても重要。任意接種のため費用は原則個人負担となりますが、特に重症化リスクの高い基礎疾患のある高齢者にとっては、命を守るためのワクチン接種と言えるのではないでしょうか。

 

アレックスビーはウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンである「組換えサブユニットワクチン」と呼ばれるもの。ウイルスそのものは使用されておらず、ワクチン接種で感染することはありません。接種方法は筋肉注射で1回接種。追加接種の必要性は検証中です。副作用はアレルギー反応、疼痛、発熱、頭痛、関節痛、腹痛、倦怠感などの症状が出ることがあります。

 

アメリカでは毎年6,000–10,000人の高齢者がRSウイルスで死亡しています。日本でもRSウイルス感染症の60歳以上の患者は年間70万人と推定されていて、このうち入院は6.3万人、死亡は4,500人。インフルエンザにも匹敵する患者数といえます。これまで公表されているデータによると、RSウイルスワクチンの接種により、高齢者のRSウイルスでの感染のリスク・入院・重症化が4分の1から5分の1に減るとされています。

 

特に接種が推奨されているのは下記などの持病がある方です。

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の方
  • 喘息を持っている方
  • 心不全がある方
  • 脳梗塞・脳出血などの脳疾患がある方
  • 糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患がある方
  • 血液疾患や免疫不全・担癌患者など

 

当院でもRSウイルスワクチン接種の準備ができ次第、ホームページにてご案内いたします。

コロナ、インフルエンザと同じように気をつける必要があるRSウイルス感染症は、日々の生活の中で感染する病気です。CMでさだまさしさんもおっしゃっているように「健康でいられることは本当に幸せで、年齢を重ねても健康でいられるようにどうか自分事として身近に感じて欲しい、予防できることは出来るだけ予防を行って欲しい」と、私もそう思います。

 

 

■RSウイルス感染症感染拡大防止のために■

年長児や大人は、再感染で軽症のため本人も気づかずに感染源となり、感染を広げてしまうこともあります。症状がある場合は、可能な限り乳幼児との接触を避けることが乳幼児の発症予防に繋がります。感染しない、感染させない、RSウイルスの感染を防ぐために気をつけましょう。

  • 20秒以上の石鹸を使用した手洗いをこまめに
  • 頻繫に触れるドアノブ等のモノの表面を消毒
  • 鼻水、咳などの呼吸器症状がある時はマスク着用
  • 体調が悪い時には休む
  • 飲食前の手洗いの慣行
  • 咳などの呼吸器症状がある年長児や成人は、可能な限り0~1歳児との接触を避けましょう。
  • RSウイルスの集団感染が発生しやすい長期療養施設(介護施設等)ではRSウイルス感染により高齢者は肺炎などの合併症を引き起こすことも報告されているため、特に注意が必要です。

 

RSウイルス感染症参考ページ:https://rsvirus.jp/

RSウイルス感染症疾患啓発動画:https://www.youtube.com/watch?v=DzEwmhXsaRE

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