身につける医療機器

前回、前々回とで睡眠アプリについてお話してきました。AIやIT分野の進歩は、私たちの「健康」を維持するためにも活躍してくれます。
2年前に「ウェアラブル医療機器の現状」のお話でスマートウォッチやスマートリング等の身につける医療機器について少し書きましたが、今回はもう少し詳しく具体的な機能や、現時点で発売されている製品にも触れていきたいと思います。

実は私も、AppleWatch(アップルウォッチ)とOuraRing(オーラリング)を常時身につけていて、気が付けば心電図の計測、Bluetooth連動の血圧計や体重計で測定して、自分の健康データを集め、夜は睡眠アプリを立ち上げて寝ています。
そうすると、デバイスに直接連動したアプリから、アップルのヘルスケアアプリへとデータが集約され健康状態を分析、今日の活動目標や最適な就寝時間もアドバイスしてくれるようになります。
このように私はウェアラブルデバイスを日々活用することで、遠隔医療の未来を垣間見ています。

ウェアラブルデバイスで何ができる?

今や誰もが使っていると思うほど普及しているイメージの携帯電話=スマートフォンは、今からたった15年程前に日本に上陸したものです。
デジタル庁が行った「日本のデジタル度2021」※¹では、スマートフォンの保有率は86.8%でした。
高齢化社会の日本におけるこの数字から、高齢者の保有率も高いことが伺えます。では、ウェアラブルデバイス=身につけることができる電子デバイスであるスマートウォッチ、スマートリングなどはどうでしょうか。
前出のデジタル庁が行った調査において、スマートウォッチやスマートリング等のウェアラブルデバイスの保有率は5%でしたが、2022年の民間調べにおいては保有率11.3%とでています。
コロナ禍で健康への意識が高まったこともあり急速にウェアラブルデバイスの普及率は伸びているようです。
ウェアラブルデバイスもスマートフォンのように、あっという間に大半の人がもつものになるかもしれません。
ウェアラブルデバイスには、スマートフォンと比べて下記のようなメリットがあります。

リアルタイムデータモニタリング

身につけるタイプのデバイスなので手軽により正確に、健康やフィットネスに関するデータをリアルタイムでモニタリング。
例えば、心拍数や歩数、睡眠パターンなどの情報を手元で確認できるため、日々の活動状況を把握しやすくなる。
また、自身の小さな体調の変化も可視化され認識できる。

運動やフィットネストラッキング

デバイスを身につけることで運動やフィットネスアクティビティを正確にトラッキングすることが可能。
ランニング、サイクリング、ウェイトトレーニングなどのデータを記録し、トレーニングの進捗を把握しやすくなる。

通知の効率的な管理

スマートフォンからの通知を、身につけている手元のデバイスで確認できるため、スマートフォンを取り出す手間が省ける。
重要な通知を見逃すことが少なくなり、コミュニケーションの効率が向上する。

コンパクトで便利

ウェアラブルデバイスの多くは、腕や指に装着する小型のデバイスであり、携帯性が高く、スマートフォンよりも軽量で、日常生活での携帯が簡単。

モチベーション向上

フィットネストラッキングや目標設定、アクティビティの報酬などがユーザーのモチベーションを向上させ、健康的な習慣の構築をサポートしてくれる。

位置情報の追跡

GPSが組み込まれているウェアラブルデバイスでは、位置情報を正確にトラッキングすることが可能。
ランニングやハイキングの際には、距離やルートを記録できるので特に便利。
またユーザーが自ら通報、もしくは予期せぬ転倒等を検知した際に緊急自動通報できる機能がついたものもある。

手軽なアクセサリー

ウェアラブルデバイスは、時計やアクセサリーとしてのデザイン性があがっており、外見のスタイルやファッションに合わせて選ぶことができる。
スマートデバイスとしては、他にもスマートウェアやスマートシューズ、スマートグラス、スマート帽子等も開発されている。

※¹ デジタル庁「日本のデジタル度2021」20211010_digital_degree_02.pdf

スマートウォッチ選びのポイント

スマートウォッチは、電話やメール、SNSの送受信等の基本機能や、キャッシュレス決済等、ご自身が使用されているスマートフォンとの連携ができるものが便利ですね。
また、時計としての機能はもちろんですが、自分が主に使いたい機能を明確にして選ぶことも大切です。

  • GPS機能を活用したナビゲーション機能や距離計測機能
  • 心拍測定機能などがあるフィットネストラッキング
  • 活動量、歩数、心拍数、睡眠などの健康情報をトラッキング
  • キャッシュレス決済
  • スマートフォンなしで音楽再生や音声操作ができるか、カメラ内臓もしくはスマートフォンの遠隔操作による写真撮影等

もちろん、ウェアラブルデバイスを医療機器として健康管理記録をメインに使用し、電話やメールなどの主なスマートフォンの機能を求めないような使い方も良いのかなと思います。

●対応機種
スマートウォッチが使用できる対応機種やOS(iOS、Android)やバージョンに留意する。
特にiOSとAndroidでの互換性が重要。

●デザインと快適さ
デザインや装着感のチェックは必須。
スタイリッシュな外観や着け心地の良さが日常使用に影響を与える。

●バッテリー寿命
バッテリー寿命は重要な要素。
一般的に、長いバッテリー寿命があるほど、充電の頻度が減る。

●ディスプレイ
ディスプレイの種類(AMOLED、LCDなど)や解像度に注意。
見やすく、カラフルなディスプレイは利便性を向上させる。

●防水性
防水性があるかどうかを確認。
特に水泳や水上スポーツを行う場合には防水性が必要。

●健康トラッキング機能
心拍数モニタリング、睡眠トラッキング、歩数計など、自分が利用したい健康トラッキング機能を確認する。

●アプリサポート
スマートウォッチをサポートするアプリの品質や種類も確認。
特に特定のアプリが必要な場合は、その互換性を確認する。

ウォッチ派?リング派?スマートバンドも!

スマートリングも基本的にはスマートウォッチの選び方と同じと言えますが、特に腕時計を身につけることが好ましくないという方向けとも言えます。スマートリングは指に装着するので、スマートウォッチと比べるとかなりコンパクトで軽量。外観も洗練していて、ファッショナブルな選択肢も豊富。また、指につけたまま寝るだけなので違和感がないことと、手首より指の方が脳波の測定精度が高いため医療機器と同等レベルの睡眠トラッキングが可能だということも特徴ですね。多くのスマートリングは防水性を備えており、水中で使用できます。

ただ、デメリットとしては、多くのスマートリングは液晶ディスプレイやタッチスクリーンの搭載がされていないため、スマートウォッチと比べると情報の表示の制限があり、操作の制約を受けることがあります。

最近はスマートウォッチよりスリムで装着感が軽く、スマートリングより多機能で操作性が高いスマートバンドも人気のようです。

ウェアラブルデバイスの一例

スマートウォッチ

スマートウォッチ市場のシェア半数以上を占めているApple Watch。
2015年に日本でスマートウォッチが販売されて以来、8年連続で首位を獲得しています。

Apple Watch Series 9

手がふさがっていても、親指と人差し指をトントンと2回くっつける動作でダブルタップするだけで、電話に出ること、通知を聞くこと、音楽を聴くことも可能。
2本の指をつまむという動きをモーションセンサーと血流を見るオプティカルセンサーで検出するそうです。
技術の進歩が凄まじい、スゴイ時代ですね。
ディスプレイの明るさもSeries8の2倍になり、より鮮やかで太陽の下でもくっきりと見やすく、進化のスピードには驚かされます。

メディカルデバイスという点では、心と体の健康をより深く理解するために健康データを取り、医療機関、友だち、家族と共有でき、管理できます。
また、あらゆる動きを計測して、フィットネスのパートナーとして、目標設定やモチベーションが続くようにサポートしてくれるという意味では、予防医療の大きな担い手となります。
例えば、先進的なセンサーとアプリを搭載して体に取り込まれた酸素レベルをチェック、不規則な心拍リズムを異常アラートで知らせて医師の診断を受けるように促す。
心電図を記録したり、身体が受けた衝撃を検知して緊急通報したり、事前に設定した緊急連絡先に連絡することも可能。
眠っている間の皮膚温の記録から月経周期を記録。
睡眠アプリでは睡眠を記録するだけでなく、睡眠のスケジュールや就寝前の習慣を作るサポートをしてくれます。

もちろん、電話をしたり音楽を聴いたり、リマインダーや天気情報の通知を受け取る等、iPhoneを使わずともApp Storeから新しいアプリを直接Apple Watchにダウンロードしたり、Apple Payで交通機関に乗ったり、様々な支払いを済ませる機能もあります。
iPhoneを探す機能を使えばすぐに見つけられます。

<機能・性能>

  • 血中酸素ウェルネスアプリ
  • 心電図アプリ
  • 高心拍数と低心拍数の通知
  • 不規則な心拍リズムの通知
  • 心肺機能レベルの低下の通知
  • 皮膚温センサー
  • 過去の排卵を推定できる周期記録
  • 緊急SOS
  • 海外における緊急通報

  • 転倒検出と衝突事故検出
  •  50mの耐水性能
  • 泳げる耐水性能
  • GPS
  • GPS + Cellularモデルの携帯電話通信機能
  • ファミリー共有設定に対応(GPS + Cellularモデル)
  • iPhoneを持っていない家族ともつながれる
  • 最大18時間
  • 低電力モードで最大36時間
  • 高速充電
  • Retinaディスプレイ
  • 最大2,000ニト・ダブルタップのジェスチャー
  • 一段と速いデバイス上のSiri
  • カーボンニュートラルな組み合わせが選べる

その他、スマートウォッチのブランドはGoogle Pixel Watch 、Garmin、Huawei等たくさんありますし、健康管理、フィットネス、睡眠管理等の機能も充実しています。
ストレスとの上手な付き合い方に着目したFitbitは、ストレスに関連する反応が検出されると通知が来て、深呼吸をはじめとするアクティビティの提案をくれるのも面白いですね。

スマートリング

Oura(オーラ)リングは、睡眠が健康に大きく影響するという考え方から、2013年にスリープトラッカーとして誕生した健康管理型のスマートリング。

Oura Ring Gen3 Horizon・Oura Ring Gen3 Heritage

新型の第3世代のオーラリングは、滑らかなデザインのHorizonと上面が平らになったクラッシックなデザインのHeritage。
睡眠やコンディションのデータだけでなく、日中の心拍数まで測ることができるようにアップデートされました。

心拍数、体表温、血中酸素飽和度など、20以上の生体情報を最も正確に測定できる指に装着することで、高精度なデータを得られ、健康状態を把握できます。
またOuraリングは、地球上で最も強い金属の1つであるチタンで作られているため、軽量で、耐久性と耐水性に優れていて、高級感のあるデザインも魅力。
バッテリー持続時間は長時間で最大7日間。もちろん防水仕様で100mまでの耐水性があります。

睡眠、コンディション、アクティビティの3つのスコアで自身の状態を確認できます。

<睡眠>

睡眠トラッカーでは安静時の心拍数や睡眠効率、睡眠のタイプなども測定でき、睡眠の質をスコアで教えてくれる。

<コンディション>

安静時の心拍数や心拍変動バランス、体表温、活動量、睡眠などの測定データから、健康状態をスコアで表示。
心身の疲労回復度を可視化でき、解説やアドバイスの詳細も確認できます。
体表温と心拍数の変化をモニタリングし、病気の兆候をいち早く検知。

<アクティビティ>

心拍数、アクティビティレベル、トレーニング頻度をトラッキングし、目標の達成度だけでなく、十分な回復が取れているかをアドバイスしてくれる。

ただし、機能をすべて利用するには、別途「Ouraエクスペリエンス」へ有料メンバーシップ登録が必要

スマートバンド

スマートバンドの明確な定義はありませんが、スマートウォッチよりコンパクトで機能もシンプルなものがスマートバンドと呼ばれています。
価格的にもスマートウォッチと比べるとお手頃。Fitbitは2007年に創業し、ウェアラブルデバイスのパイオニアとも言える会社。
Fitbitのスマートバンドはトラッカーという商品です。

Fitbit charge6

健康データの計測制度が高いと定評のあるFitbitのデバイス。
同社製品の中でも最新機種のFitbit charge6は、心拍数計測の精度が最も高くなっているようです。
身につけているだけでアクティビティを自動計測してくれるので、少しの買い物や、通勤の自転車での移動等も、歩数・消費カロリーをデータとしてきちんと保存。
また、VO2max(最大酸素摂取量)から、ハードな運動時にどれだけの酸素を取り込めるか把握できるため、自身のフィットネスレベルが分かります。
眠っている間のモニタリングから、睡眠の質を睡眠スコアで可視化でき、ストレスに対する体の反応がスコア表示されるのでストレス管理にも役立ちます。
フィットネスと健康管理の機能は充実していると言えるでしょう。

  • <フィットネス機能>
  • エクササイズ機器に心拍数を表示
  • 今日のエナジースコア
  • 40以上のエクササイズモード
  • 心拍数の測定
  • アクティブな心拍ゾーン
  • GPS搭載
  • 心肺機能のフィットネスレベル
  • SmartTrackによるエクササイズの自動認識(アプリ内のみ) 耐水性能
  • スマートフォンでワークアウト
  • 歩数、距離、消費カロリー等、終日アクティビティを記録
  • ワークアウトの強度マップ(アプリ内のみ)
  • タイマー&ストップウォッチ

<健康管理機能>

高/低心拍数の通知 ・血中酸素ウェルネスの測定 ・推定睡眠時皮膚温の変動・安静時の心拍数 ・呼吸数 ・月経に関する記録 ・水分補給、睡眠習慣や運動などのリマインダー

<睡眠機能>

睡眠プロフィール ・睡眠の記録&睡眠ステージ ・睡眠スコア・スマートアラーム 

<ストレス機能>

ストレスマネジメントスコア ・ストレスマネジメントに役立つ皮膚電気活動スキャンアプリ ・睡眠スコア・睡眠プロフィール・睡眠の記録&睡眠ステージ・スマートアラーム気分を記録 

<スマート機能、デザイン、その他>

サイレントモード & おやすみモード ・YouTube Music の操作 ・Googleマップ ・着信、テキストメッセージの受信、アプリの通知を表示 ・カラータッチスクリーン ・電話を探す ・常時表示モード ・バッテリー寿命 7 日間・さまざまな文字盤 & アクセサリー ・iOSおよびAndroidデバイスに対応 ・Fitbit Premiumのメンバーシップ 6 ヶ月

 

以上、長くなりましたが、現時点でのウェアラブルデバイスについての紹介でした。
また数年後には、機能も性能もより進化を遂げて驚かされることでしょう。IT・デジタル技術の進歩、活用による医療の発展が楽しみです。

※病院ブロガーの個人の所感であり、機能・性能・その他一切を保証するものではありません。

 

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