それでも、このまま喫煙を続けますか?

これまでも喫煙がもたらす病気については何度かブログでお話してきました。通称“タバコ病”や“肺の生活習慣病”とも呼ばれる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんは新型コロナウイルス感染症が重症化しやすく、死への近道となってしまうこともお伝えしましたね。

新型コロナ重症化のリスク~慢性閉塞性肺疾患(COPD)~

(昔は「肺気腫」と呼ばれていた病気は、現在「慢性気管支炎」を含む総称としてCOPD(chronic obstructive pulmonary disease)「慢性閉塞性肺疾患」と言います)

WHO(世界保健機関)によると、2019年に慢性閉塞性肺疾患(COPD)で亡くなった人は323万人、世界の死亡原因第3位となりました。日本ではCOPDの原因の90%以上が喫煙によるものといわれています。

 

COPDは一度発症すると元には戻りません!

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコの煙を主とする有害物質を吸い込むことによって、気管支や肺に炎症が起こる病気。肺胞にまで炎症が及ぶと、肺胞の壁が破壊され、古くなった風船のように弾力がなくなり、空気を上手く吐き出せなくなります。煙草を吸う人は「煙草をやめるくらいなら死んだ方がいい」と思っている人もいるかもしれませんが、実際は、想像以上の息苦しさによって、今当たり前だと思っている普通の生活が送れなくなり、苦しみはずっと続きます。肺胞等の組織は一度破壊されてしまうと、再生することができないので治療しても元に戻すことはできず「死ぬより苦しい病気」と言われています。

 

COPDの症状

初期症状は、透明なたんが絡む軽い咳など軽い症状、坂道や階段をのぼるくらいの運動で息切れすることもありますが「歳のせいか、、、」などと見過ごしがちです。
徐々に咳の回数やたんの量が増えて、たんの色も白っぽくなったり、黄色または緑っぽい色に変わります。
更に進行すると、息切れがさらに激しくなり、ぜいぜいする喘鳴や、発作的な呼吸困難、肺炎や体重減少、喀血(咳とともに血が出ること)などの症状がでてくることもあります。肺がもろくなって部分的に破裂して肺がしぼんでしまう状態の「気胸」を発症すると、突然の痛みや息切れで、漏れた空気を胸から抜くための応急処置が必要になります。

また、COPDは肺だけでなく全身に炎症をもたらす全身性の疾患なので、貧血、骨粗鬆症、抑うつ、睡眠障害などの影響もあらわれます。肺がん、糖尿病や心臓病、脳血管障害などの病気も引き起こします。

 

COPDの治療

先にもお話した通り、現時点でCOPDは治療しても、肺を元気な状態に戻して根本的に直すということはできません。少しでも早い段階で気づき、治療を開始することで、現状の改善と進行を止めることが大切です。治療としては、禁煙はもちろん、気管支を拡げて呼吸を楽にするための気管支拡張薬等の服用や、患者さん自身が自立できるように継続的な支援をする呼吸リハビリテーション(運動療法、セルフマネジメント教育、栄養療法、心理社会的サポート等)などを行います。薬は、何種類もあると面倒になり続かないという方もいらっしゃいますが、現在はCOPDの治療薬として、気管支拡張剤2種類と抗炎症剤を1種類含む3つの薬を一つにまとめた吸入剤(テリルジー等)が適応になっています。1日1回毎日規則正しく服用することで、発作を予防し長期的に安定した状態を維持するための薬です。

また、呼吸の働きが悪くなり、体に十分な酸素が回らなくなることを呼吸不全と言いますが、呼吸不全が1ヶ月以上続くと慢性呼吸不全という状態になります。慢性呼吸不全には、酸素を供給する器具を使用するなどの酸素療法が用いられ、さまざまな内科的治療を行っても症状が改善しない場合には、膨らみすぎた肺の一部を切除する外科療法が行われることもあります。

 

自宅でできる酸素療法

昔は、酸素を吸うために長期間入院が必要だった酸素療法ですが、現在はHOT(Home Oxygen Therapy)と呼ばれる在宅酸素療法があり、自宅で長期的に酸素呼吸器を使用し、不足している酸素を補うことができます。
COPDなどの疾患により、肺の機能が弱まり、十分な酸素を取り込むことができずにいると、慢性的に血液中の酸素量が低下した状態になります。酸素が身体に行きわたっていないと、日常生活の維持ができなくなることから、さまざまな障害が起こってきます。運動不足、栄養不良、心臓にも負担がかかり心不全等も招くことになりかねません。酸素療法で酸素吸入することよって、息切れ改善で心臓への負担を軽減・生活の行動範囲拡大・頭痛や注意力の低下、記憶力低下症状の改善・睡眠中の酸素不足改善・寿命の延長・生活の質(Quality of Life : QOL)の改善が期待できるのです。

 

禁煙が一番

コロナ禍の行動制限によるストレスで喫煙量が増えた人がいる一方、禁煙する人が増えています。タバコの値上がりも理由の一つとしてあるのですが、近年、健康志向が急激に高まっているからだと思われます。なぜ今、健康を意識する人が増えたのでしょうか。冒頭で申し上げたように、喫煙がコロナウイルス重症化リスクにつながることはもちろんですが、少子高齢化による医療費負担の増大、人生100年と言われる長生きの時代にいかに健康寿命を延ばすか、といったところへの意識も高まっているからですね。COPDの治療法はさまざまあるものの、禁煙が一番の治療と言えます。みなさんも今一度、自分の将来の姿を想像し、笑顔の自分でい続けるための最良の選択をして欲しいものです。

当院の禁煙外来については、現在、製薬会社の諸般の事情により、治療薬の「チャンピックス」の供給が不安定になっていることから、当面休止とさせて頂いております。再開は、早くても2022年秋以降となる予定ですが、当ホームページにてお知らせするまで、禁煙に向けての心の準備をしてお待ち頂ければと思います。

 

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