コロナの後遺症ってホントにあるの?

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが続く中、変異株が次々と発生しています。感染力が強いオミクロン株の流行で、コロナウイルスに感染した、もしくは身近な人が感染したという人も多いでしょう。また、PCR検査で陽性がでても自覚症状はないという人も多いので、“コロナもたいしたことはない”と甘くみる人もしばしば見受けられます。では、なぜ「軽症に見えても感染に注意が必要」と言われるのでしょうか。実は、ウイルスが陰性となって感染性がなくなり主な症状は回復しても、倦怠感や睡眠障害、思考力や集中力の低下などが続く、もしくは新たに現れることがあります。こういった後遺症と呼ばれるような症状は3ヶ月ほどで約2/3は回復しますが、不安が募ることで持続したり悪化したりすることもあるのです。

 

新型コロナウイルス罹患後症状とは

新型コロナウイルス感染症に対しては、世界中から多くの知見が寄せられ日々研究が進められて、感染対策や診断、治療、予防法などが確立されつつあります。ただ、未だ全てが解明されてはおらず、新型コロナウイルスにかかった一部の人にみられるさまざまな後遺症のような症状=「新型コロナウイルス罹患後症状」が新たな課題となっています。WHO(世界保健機関)でも”post COVID-19 condition”として、次のように定義しています。
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)

「新型コロナウイルスにかかった人に見られ、少なくとも2ヶ月以上持続し、また他の疾患による症状として説明がつかないもの。通常は新型コロナウイルス感染症の発症から3ヶ月経った時点にも見られる。症状には、倦怠感、息切れ、思考力や記憶への影響などがあり、日常生活に影響することもある。COVID-19の急性期から回復した後に新たに出現する症状と、急性期から持続する症状がある。また、症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある。小児には別の定義が当てはまると考えられる。」
※小児についてはさらなる情報収集と詳細な分析が必要と考えられています。

 

代表的な新型コロナウイルス罹患後症状

新型コロナウイルス感染後の症状について、海外から多くの大規模調査研究の結果が報告されており、日本でも厚生労働科学特別研究で3つの調査が行われるなど研究が進められていますが、罹患後症状が永続するかは現時点では不明です。

  • 全身症状・・・疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛
  • 呼吸器症状・・・咳、喀痰、息切れ、胸痛
  • 精神・神経症状・・・記憶障害、集中力低下、不眠(睡眠障害)、頭痛、抑うつ
  • その他の症状・・・嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、脱毛

慶応義塾大学呼吸器内科で入院中15%以上の患者に認められた罹患後症状のデータによると、多くの症状は時間と共に改善したものの、疲労感・倦怠感、思考力・集中力低下、睡眠障害は10%以上の患者にみられ、6ヶ月経過しても改善しなかったということです。

 

新型コロナウイルス罹患後症状の事例

新型コロナウイルス罹患後症状については、現時点では診療やケアの手順が国内で標準化されておらず医療の提供が遅れていることや、認知も広まっていないことからも、なかなか会社や学校で理解を得られないことがあります。そのため、疲労感を気分の問題と捉えて、頑張りすぎて身体的疲労を重ね症状を悪化させるケースや、倦怠感で動けないことを理解してもらえず心が疲弊してうつ状態になり、他の症状を併発するケースもあります。

 

新型コロナウイルス罹患後症状との向き合い方

デコンディショニングという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。デコンディショニングとは、病気で安静にしたり寝込んだりすることによる運動能力の低下、心拍数・血圧調節の異常、骨格筋量や筋力低下、呼吸機能の低下など、「調節する」という意味のコンディショニングの逆で身体調節機能に異常をきたすことを言います。それは臥せっている期間が2,3日の場合でも起こり得るため、新型コロナウイルスの罹患後症状としても現れることがあります。

倦怠感などの一般的な罹患後症状については、規則正しい栄養補給と水分摂取はもちろんのこと、下記のように焦らずに自身の身体の声に耳を傾けながら少しずつ身体を動かしていくことが大切ですが、症状が改善せずに持続する場合は、かかりつけ医や医療機関にご相談ください。他の疾患による可能性も含めて検査、症状に合わせて必要な治療やリハビリ、精神的ケア等を行います。また、疼痛(とうつう)(痛みや苦痛),睡眠障害,気分障害などの罹患後症状もある場合は、その治療も並行して行っていきます。当院では新型コロナウイルス罹患後症状に対してもオンライン診療を実施しています。新型コロナウイルス感染症流行中の現在は、初診でも保険適応でオンライン診療が認められており、在宅での受診が可能です。

http://seikohkai-hp.com/telemedicine/

  • 疲労を克服しようと頑張りすぎず、疲れたら休むではなく疲れる前に休憩をとる。
  • 日々の体調に合わせて、体力の範囲内で生活し、オーバーワークを防ぐ。
  • 疲労は身体を使う運動でなくても、頭を使うスマホやネット、テレビでも生じるので留意が必要。
 
予防が最大の治療

痛みは当事者でないと分からないと言いますが、新型コロナウイルス罹患後症状はコロナウイルス感染時より辛いという声もあります。それを防ぐためには、何より感染予防が一番です。国立国際医療研究センターが行った調査では、コロナワクチンは発症予防や重症化予防だけではなく、罹患後症状の出現予防にも寄与する可能性があることが報告されています。コロナ感染時に軽症であった若い世代の方でも、罹患後症状に苦しむ方も少なくないので、ワクチン接種も含めて今一度予防に努める姿勢を整えて頂きたいと思います。

 

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