「脳卒中」は予防できる!

クリスマス目前の12月ともなれば、ライトアップされたイルミネーションが幻想的に街を彩っていますね。実は少し早い時期、10月29日にも各地でライトアップイベントが開催されていました。なぜだかご存知でしょうか?10月29日は「世界脳卒中デー」で、脳卒中予防や早期発見のための啓発活動として、各地のモニュメントや建造物がシンボルカラーのインディゴ・ブルーにライトアップされました。脳卒中は2021年の厚生労働省の統計によると日本人の死因の第4位。世界的にも増え続けており、2006年10月に 世界唯一の組織、世界脳卒中機構(World Stroke Organization, WSO)が結成され、毎年10月29日は「世界脳卒中デー(World Stroke Day)」となっているのです。

 

脳卒中とは?

脳卒中は、正式には「脳血管障害」と呼ばれ、血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血の大きく2つに分けられます。

●血管がつまる・・・脳梗塞

●血管が破れる・・・脳出血(脳自体に血液がたまる)、くも膜下出血(脳と頭蓋骨の間のくも膜の下に血液がたまる)

 

脳卒中の症状

脳卒中の「卒中」を読み解くと、“卒”は「突然」を意味し、“中”は「中る(あたる)」ことを意味するので、脳卒中とは、脳に突然に起こる病気のこと。人間の体の司令塔である脳がダメージを受けるのでダメージを受けた場所によってさまざま症状が起こりますが、代表的な症状としては半身麻痺・感覚障害、言語障害、視野障害、激しい頭痛や意識障害などです。具体的には下記のような症状です。

  • 片方の手足・顔半分の麻痺やしびれがおこる。
  • 呂律がまわらない、言葉がでない、他人の言うことが理解できない。
  • 力はあるのに、立てない、歩けない、バランスがとれずフラフラする。
  • 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける。片方の目にカーテンがかかったように、突然一時的に見えなくなる
  • 経験したことのない激しい頭痛がする。

症状は1つだけ現れる場合もありますし、いくつか重なることもあります。

また、脳卒中の前兆として一時的に症状が現れるものの、短時間のうちに回復する「一過性虚血発作(TIA)」があります。脳卒中と同じような症状が出た場合は、見逃さず医師の診察を受けることが脳卒中の早期発見に繋がります。

 

ACT FAST!!

特に覚えておいて頂きたいのは、顔(Face)の麻痺、腕(Arm)の麻痺、言葉(Speech)の障害の3つの症状。米国脳卒中協会は、下記の3つの症状のうち1つでも当てはまる場合は脳卒中を疑い「ACT FAST(急いで行動を)」を推奨しています。

FASTとは

F:顔(Face)のゆがみ、顔の片側が下がる
A:腕(Arm)が麻痺により両腕を同じように上げたままキープできない
S:言葉(Speech)がうまくでない・ろれつが回らない
T:発症時刻(Time)を確認して、すぐに(Fast)119番に電話し救急車を呼びましょう。発症からの経過時間によって治療法が異なるので発症時刻の確認は大事。脳の細胞は分単位で失われるので時間が勝負、救命はもちろんですが、後遺症が残るリスク軽減のためにも一刻も早く受診する必要があります。

 

脳卒中は予防できる

病名は脳に突然起こるという意味を持つ「脳卒中」ですが、実は予防ができる病気だということをたくさんの方に知っていただきたいところです。脳卒中の最大の危険因子は高血圧。高血圧は、血液が流れる動脈の血管に加わる圧力が異常に高くなる状態。高血圧の場合、動脈は強い圧力を受け続け、内側の壁が傷つき、硬くなる「動脈硬化」という状態になるので、脳卒中の発症率は高くなります。

脳卒中を引き起こす主な要因としてあげられる高血圧、動脈硬化、糖尿病、脂質異常症等は、食生活や多量の飲酒、喫煙、肥満、運動不足が原因。その他、過労やストレス、睡眠不足も関係しています。これらはすべて生活習慣病と深く関わっていますが、生活習慣病は目立った症状が表れないことが多いので、脳卒中や心臓病などを引き起こしてから気づくケースも多くみられます。生活習慣病に気をつけることは、人生を左右する病気「脳卒中」の予防になるのです。公益社団法人日本脳卒中協会は、下記の「脳卒中予防十か条」を提案し、少しでも意識を持って予防に取り組むよう呼びかけています。

【脳卒中予防10か条】
1. 手始めに 高血圧から 治しましょう
2. 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
3. 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
4. 予防には たばこを止める 意志を持て
5. アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
6. 高すぎる コレステロールも 見逃すな
7. お食事の 塩分・脂肪 控えめに
8. 体力に 合った運動 続けよう
9. 万病の 引き金になる 太りすぎ
10. 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ

 

寝たきりの原因第1位

日本は今、65歳以上の高齢者が21%を超えた「超高齢化社会」に突入しています。健康で長生きは素晴らしいことですが、脳卒中の怖さは日本人の死因第4位ということだけでなく、寝たきり原因の第1位という現実にあります。脳卒中は、脳の血管が詰まるか破れるかによって脳の組織がダメージを受けるので、治療により一命をとりとめることができたとしても、重篤な後遺症が残る危険性をはらんでいるのです。後遺症は身体の麻痺や言語障害、意識障害など、ご本人とその家族の現状の生活を一変させるものです。また脳血管性認知症を引き起こすこともあります。人生100年時代の今、脳卒中予防に取り組んで健康寿命を延ばしましょう。

 

 

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