命を脅かす!突然襲う激痛~解離性大動脈瘤(大動脈解離)~

トレードマークは黄色いメガネ、明るく元気なキャラクターで多くの人に親しまれてきた笑福亭笑瓶さんが先月、2月22日に亡くなられました。死因となったのは、急性大動脈解離。笑福亭笑瓶さんは2015年にもプライベートでのゴルフ中に胸の痛みを訴えてドクターヘリで救急搬送され、無事に回復されましたが、その際も急性大動脈解離でした。故人のご冥福をお祈り申し上げます。今回はこの疾患についてお話ししたいと思います。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤とは

 

大動脈は、心臓から全身へ血液を送る本幹です。大動脈の血管の壁は、簡単に破れないように3層(内膜、中膜、外膜)になっていますが、何らかの原因で内膜に裂け目ができて、内膜の外側の中膜まで血液が入り込んでしまい、本来の血液の通り道とは別にもう一つ血液の流れ道ができてしまった状態を大動脈解離といいます。内膜が裂けて中膜に血液が流れ込み、外側には外膜があるものの壁が薄くなっているため中膜が膨らむことにより瘤(こぶ)状のものができるので、解離性大動脈瘤とよばれるわけです。

 

 

 

大動脈に解離がおこると、体内に十分な血液が流れず、臓器の血流障害が起こります。解離箇所によって血流障害が起こる場所が違うので、発症する合併症も違いますが、心臓や脳に近い場所だと、脳卒中や心筋梗塞、心不全などを発症。また腹部部位での解離は、腎臓や腸管の血流障害を招き、腎不全や腸管壊死等、いずれも致死的な合併症を引き起こすことになります。

 

 

 

◆解離性大動脈溜は破裂する?

 

解離性大動脈溜は、血液の本来の通り道(=内膜)でないところ(=中膜)に道ができてしまい瘤となった状態。この状態では血管の壁が裂けている状態ですが、壁が外膜だけで薄くなっているため、血管の破裂するリスクも高くなります。大動脈破裂が発生すると、体内の血液が一気に外に流れ出して、血圧が急激に低下するため、意識障害やショック症状が表れます。破裂した場合は、死亡率は非常に高く、治療を受けなかった場合の死亡率はほぼ100%。緊急の治療を受けた場合でも、生存率は10%~30%程度とされています。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤の症状

 

解離性大動脈瘤は、自覚症状がないままに大きくなるケースが多いのが事実。解離性大動脈瘤ができた場所によって痛みが起こる場所は違いますが、突然に胸や背中に何かを打ち込まれて刺されるような痛みが走り、その痛みはこの世のものではないとも言われています。解離の場所や進行度合いによって異なりますが、以下のような症状が現れることがあります。

 

 

 

●胸痛

 

解離性大動脈瘤の主な症状の1つが胸痛です。痛みは、腹部大動脈の解離の場合は背部から背中にかけて、胸部大動脈の解離の場合は胸骨後部から肩甲骨にかけて感じられます。痛みは非常に強く、突然始まり、長時間続くことがあります。

 

 

 

●脈拍の異常

 

 解離性大動脈瘤では、脈拍が不規則になることがあります。特に、心拍数が速くなり、動悸や息切れを感じることがあります。

 

 

 

●末梢循環障害

 

解離性大動脈瘤が進行すると、血管内の血液が正常に循環しなくなり、末梢循環障害が起こることがあります。手足の冷感やしびれ、痛み、皮膚の色が変わることがあります。

 

 

 

●呼吸困難

 

解離性大動脈瘤が進行すると、胸腔内に圧迫がかかり、呼吸困難が起こることがあります。また、肺に血液が漏れ出す場合もあり、咳や喘鳴を伴う呼吸困難が生じることがあります。

 

 

 

●意識障害

 

解離性大動脈瘤が進行すると、脳への血液供給が悪くなることがあり、意識障害が起こることがあります。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤の原因

 

解離性大動脈瘤の原因は複数ありますが、ほとんどが動脈硬化や高血圧によって動脈の壁が劣化することで起こります。その他、脂質異常症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、ストレスによって大動脈の壁に負担がかかり原因となることがあります。過度の運動によって、大動脈に過剰な負荷がかかって発症につながるケースや、妊娠中は血管が拡張するので血圧が上昇するため発症のリスクになることもあります。

 

 

 

また、稀にマルファン症候群という先天的な遺伝疾患が原因となることがあります。大動脈の構造に関わるタンパク質の産生に影響を与えるため、大動脈の強度や柔軟性に異常が生じ解離性大動脈瘤発症リスクが高いとされています。多くのヒット曲を生み出しているシンガソングライターの米津玄師さんが自身のマルファン症候群発症を公表し、認知度が高まったのでご存じの方も多いかもしれませんね。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤の診断

 

解離性大動脈瘤の診断は、的確かつ迅速さが大変重要となります。病歴や身体診察、血液検査、心電図検査、画像検査などから診断し、早期発見と適切な治療により、病気の進行を遅らせることができます。

 

 

 

●病歴や身体診察

 

解離性大動脈瘤の可能性を疑うために、胸痛、背痛、呼吸困難、意識障害、下肢の痛みや腫れ、脈拍の異常などの症状や徴候を詳しく聞き取り、調べます。

 

 

 

●血液検査

 

解離性大動脈瘤の症状が現れた場合、炎症反応を示すC反応性タンパク質や赤血球沈降速度が高値を示すことがあります。

 

 

 

●心電図検査

 

胸痛がある場合には、心筋梗塞などの心臓疾患が合併している可能性があるため、心電図検査を行います。

 

 

 

●画像検査

 

画像検査としてはX線検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などがありますが、解離性大動脈瘤の診断に最も適しているのは、CT検査です。CT検査では、解離した大動脈瘤の部位、大きさ、破裂の有無、周囲の損傷などを詳しく把握することができ、全身の動脈効果の評価も可能で、治療方針を決定する上で重要な情報が得られるため、解離性大動脈瘤の確定診断にはCT検査が必須といえます。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤の治療

 

解離性大動脈瘤の治療には、心臓に近い場所(上行大動脈)に解離がある場合のスタンフォードA型か、胸部の下行大動脈から腹部にかけて解離がある場合のスタンフォードB型かなど、内膜が裂けた場所や重症度によって治療法が変わってきますが主に手術的アプローチが主要な治療法となります。どの手術方法が最適かは、患者の年齢や病状、手術のリスクなどを総合的な判断も必要であり、手術後の経過観察や生活習慣の改善なども、治療の重要な一環となります。手術ができない患者さんや手術後の患者さんには、血圧を下げる薬や心臓の働きを安定させる薬等による薬物療法が用いられることがあります。

 

 

 

●置換術

 

解離している部位を切除し、人工血管で置き換える手術です。大動脈弁を同時に交換する場合もあります。この手術では、生命に関わる重篤な合併症が起こることがあるため、リスクを考慮して適切な手術時期を選択することが重要です。心臓に近い上行大動脈に解離があるスタンフォードA型の場合、ほとんどが緊急手術となり、置換術を行います。

 

 

 

●ステントグラフト挿入術

 

大腿動脈にカテーテルを挿入し、血管内にステントグラフトと呼ばれる金属製の筒を挿入する手術です。この筒は、解離している部位を覆い、血液の流れを正常にすることで破裂を防止することができます。置換術に比べて手術的負担が軽く、治療期間が短いため、高齢者や体力の弱い患者にも適しています。スタンフォードB型の場合に用いられます。

 

 

 

●ハイブリッド手術

 

ハイブリッド手術は、置換術とステントグラフト挿入術を組み合わせた手術法です。置換術で解離している部位を切除する前に、ステントグラフトを挿入することで手術時間を短縮し、リスクを軽減することができます。

 

 

 

◆解離性大動脈瘤の予防

 

解離性大動脈瘤の原因は様々ですが、1つの原因だけでなく、複数の原因が絡み合って発症することが多いのです。予防としては、血管を丈夫に保ち動脈硬化を防ぐこと=生活習慣の改善が欠かせません。突然に襲ってくる解離性大動脈瘤を予防するためには、生活習慣病の予防が重要となります。

 

下記、動脈硬化や生活習慣病についての関連ブログもお読み頂きたいですが、健康的な食生活を心がけ、塩分や脂肪、糖質の過剰摂取を避けるようにしましょう。野菜や果物、魚などの健康的な食品をバランスよく摂ることが重要です。また、運動不足も解離性大動脈瘤のリスクを高めるため、適度な運動を習慣化することも大切です。喫煙においてはタバコに含まれる有害物質が血管を傷つけ、動脈硬化を進行させることから、禁煙をお勧めします。

 

 

 

一方で、マルファン症候群などの遺伝性疾患を持つ場合には、定期的な検査や遺伝相談などを受け、早期発見・治療を目指しましょう。

 

 

 

当院でも、生活習慣病の検査や治療、禁煙外来、遺伝相談等行っておりますので、まずはご相談ください。

 

 

 

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